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〜 木を見て森を見ない 〜

写真:健太さん(屯田公園)

<木を見て森を見ず?>

自閉症という障がいを説明する本などで、よく見かける言葉のひとつに「木を見て森を見ず」というのがあります。
しかしこの言葉は僕にとって非常に漠然としており「なんかわかったようでわからない」「頭ではわかる気はするのだけれども、どうも身体にしっくり来ない」そんな感じがしていました。
それがある冬、まるで晴天の霹靂のように、突然に頭から身体から理解できるようになったのです!
そのきっかけとは・・・

<とある横断幕>

まだ暗い冬の早朝、寝ぼけ眼をこすりながら見た新聞の一面に以下のような横断幕が垂れ下がったカラー写真が目に飛び込んできました。

 国際ス  キーマ  ラソン  
    

まずは「キーマ」に目が行き、ひき肉?って感じに頭が染まり?
次に「ラソン」が来ました。クレソンとかの兄弟かしら??
にしても「国際ス」って???
このようにして30分ほど身悶えた後、ようやく「国際スキーマラソン」にたどり着いたのです。

写真:育永さん(百合が原公園)

<見えすぎちゃって困るの>

さてこの経験から導き出されたものは「全体が見えていない」ということは「各々の関係が見えていない」ということ。
そうか「森を見ることでできない」というのは「関係性を把握できない」ことなのか。
しかも自閉症の人はワーキングメモリー(ワーキングメモリーについてはまた別の機会に)の容量が小さいため、一つ一つの言葉が強く見え過ぎてしまう
だから一度こうだと思っちゃうと、そこから自分の考えを離していくことが難しいのかと。
その時自閉症の人の気持ちがちょっとだけわかった気がしました。

写真:直也さん(さとらんど)

<グループ分け>

というわけで自閉症の人は一つ一つの情報はよくわかっているんだけど、その関係性を見つけ出し、それぞれの情報を統合することが非常に苦手。
だから概念形成がちょ〜不得意。
記憶力はいい人が多いので、情報一つ一つを覚えることは得意です。
「りんごは果物」「キュウリは野菜」このように一対一に対応した情報を覚えるのは僕よりも完璧。
しかしそのように覚えた経験のないものを示された場合。
例えば「ではパイナップルは果物?それとも野菜?」って聞かれた時。
我々は「果物は甘い」とか「野菜は甘くない」とか頭の中で概念形成、要はグルーピングをしています。
このグルーピングってやつが自閉症の人にはむむむむむぅ〜って感じ。
「パイナップルは果物」と教えてもらっていなければ「???」となってしまうわけです。

写真:聖さん(作業所)

<情報の統合>

ってオーバー過ぎる例なので、自閉症の当事者が聞いたら「そんなことはない」って怒っちゃうかもしれませんが。
そしてさらにオーバーな例(苦笑)
目の前にいる人の「顔が赤くなっている」「目が吊り上っている」「拳をにぎっている」etc・・・
ここまでは僕たちよりも見えすぎるくらい見えている。
しかしこれらの情報を統合して「どうもこの人は怒っているようだ」という理解にはなかなか至れないのです。
まるで僕が冬の朝、「国際スキーマラソン」にたどり着けなかったかように・・・

平成21年12月15日(火)

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(C) Takashi Yokota 2009